今日は、DJナンバーというものの…

今日は、DJナンバーというものの考え方についてちょっと書いてみましょう。

DJナンバーは、ダージリンティーの出荷時につけられるロットナンバーです。基本的にはその年の最初に出荷されたものをDJ-1とし、以下DJ-2、DJ-3と続いていきます。

出荷ロットはおおよそ100kgから200kgにまとめられますので、規模の大きい農園になると、10月には、DJ-600とか、DJ-700に至るところもあります。一方小規模の農園は、オータムナルでもようやく200番台ということもあります。

ファーストフラッシュ期においては、DJナンバーは、その収穫時期を表すことが多いため、プロでなくても気になるものです。例えばDJ-1は、一部の例外を除き初荷ですから、有名農園のもので、なおかつある程度以上の水準に達していれば、かなりのプレミア価格で取引されることもあります。

DJ-1にはよしあしがあります。最大のメリットは、どこの農園も、自農園の中で最も良い畑の収穫を、DJ-1にまわそうとすること。従って、DJ-1の茶葉よりも早く摘まれていても、品質によってはあえてDJ-2以降の出荷ナンバーをつけることもあります。それゆえに農園との結びつきの強いバイヤーなどには、そこに信頼を寄せて前年からDJ-1の予約を入れているところなんかもあります。

一方で、DJ-1や2のような若いロットナンバーには、リスクもあります。農園によっては、前年のオータムナルの最後に伸びた芽が、DJ-1の収穫時にいっしょに摘み取られていることもあるのです。この場合は、香りの保持が悪く、すぐに劣化してしまいます。ですから、DJ-1がファーストフラッシュのピークであることもままあるのですが、一方で早すぎるということもありえるのです。

通常ファーストフラッシュクオリティは、DJ-1からDJ-20ぐらいの間に収穫されるものです。良い年や規模の大きな農園では、これがDJ-40ぐらいまで伸びることもあります。けれども、ここにもよい意味での例外があります。

農園は、オータムナルの収穫が終わったあとに、一部の畑の茶樹を剪定し、深く刈り込みます。これは樹勢を回復するためで、4から6年に一回ぐらいはこのオペレーションを行います。この剪定を行った畑は、その年の最初から収穫が可能なわけではありませんが、最初の収穫の時には、やはりファーストフラッシュクオリティの茶葉が収穫されるのです。(今年ではプッタボン農園のDJ-76などが、このような畑から摘まれた紅茶でした。)

よくDJナンバーを収穫した順番につけられたものと説明した文章を見かけることがあります。これはまあ間違いというほどでもありませんが、厳密に言えば正確ではありません。農園では、実は異なる日に収穫したものをブレンドして、出荷ロットをまとめるということをしばしば行っているからです。

例えば収穫日順にA、B、C、Dという4つの畑から摘まれた4種の紅茶があるとすると、1/3A+2/3BをDJ-30とし、2/3A+1/3CをDJ-31、DをDJ-32、1/3B+2/3CをDJ-33とする、ということがあるのです。ですから、DJナンバーがひとつ違うと、全く別の風味になってしまうこともしばしばあるのです。ちなみにこの場合、例えばDの畑から摘まれたDJ-32が良いとすると、DJ-31やDJ-33よりも、次にDの畑から収穫されたDJ-36あたりが風味が近いことも多いでしょう。

そんなわけでDJ-ナンバーは、風味を予想する助けにはなかなかなってくれません。現物を飲んで見なければ、何もわからないのです。

お茶を知る > お茶の豆知識 | - | -2004.05.11 Tuesday

先日店頭で、グームティのファース…

先日店頭で、グームティのファーストフラッシュを飲まれたあるお客様から、「セカンドフラッシュ」に似ているという感想をいただきました。

「?」と思って詳しく伺ってみたところ、昨年のフグリ農園のティピークローナルに似ているとのこと。なるほど、言われてみればフグリのティピークローナルは、今回のグームティ同様、シナモンのような香りが濃密に薫ります。

ここ数年、紅茶ファンの方の見識の深まり方、裾野の広がり方には目を見張るものがありますが、ふつうに農園の個性を楽しむまでに至っているのですね。我々ももっと勉強せねばなりませんね。

お店からのご案内 > 紅茶 | - | -2004.05.09 Sunday

今日から龍井茶(第一便)の販売を…

今日から龍井茶(第一便)の販売を始めました。

梅家塢明前龍井茶 25g 1500円(税込み1575円)
龍塢(龍井村)明前龍井茶 25g 970円(税込み1029円)
杭州の茶農家から直接買い付けてきた、極上の龍井茶です。
少量なため、吉祥寺店のみの販売とさせていただきます。
(通信販売は、電話、ファクスにて受付しますが、出来れば店頭で試飲していただくことをお勧めいたします。)


いちおう今年最初の中国茶の入荷なので、中国茶を扱う上でのジークレフの狙いみたいなものを書いてみたいと思います。

数年前のブームを経て、現在すっかり定着した感のある中国茶ですが、良質な中国茶は、まだまだ高嶺の花の感があります。台湾烏龍茶や武夷岩茶等一部の品ついては、とても良心的な価格で提供する店が国内に存在しますが、多くの産地については、そもそも良質なものは入手そのものが困難な状況です。

このような認識のもとに、ジークレフでは、従来の市場価格の半額で提供することを目安として中国茶の販売を行います。50%もの値下げをどのようにして行うかですが、これは、賃借料や人件費などの店舗コストを、中国茶の販売価格に上乗せする必要がないためさして難しいことではありません。(これは弊社の中国紅茶やプーアル茶の品質を見ればご納得いただけるはずです。)

開店以来八年、私たちは良質な紅茶を安価に提供することを考えて営業を続けてきました。現在の価格設定は、大量買付けや、効率的な店舗運営など、仕入れ、販売両面にわたる企業努力の末に結実したものと自負しております。このノウハウを、今後は中国茶の分野においても活用してゆく所存です。どうぞご期待ください。

お店からのご案内 > 中国茶・台湾茶 | - | -2004.05.09 Sunday

「龍井茶は難しい」と以前の茶飲み…

「龍井茶は難しい」と以前の茶飲み話で書きました。
いろいろと難しい要素はありましたが、一番難しいと感じていたのは、産地で楽しまれている龍井茶の醍醐味が、日本の水でどこまで再現できるかという懸念でした。

お詳しい方はご存知でしょうが、良質な明前の西湖龍井茶は、お米のような香ばしい香りと甘味があります。これは日本でも問題なく楽しめます。しかし、さらに上質な龍井茶には、この上にまた別の甘味があります。それはちょうど岩茶の大紅包(正確にはころもへんがつく[衣包]です)が持つ甘味に近い、コクのある、しかし繊細な甘味です。

この甘味は、濃密なものではなく、それゆえに水質によっては全く再現しないのではないかと懸念していました。そして、杭州で買付けてきた梅家塢の明前龍井茶のこの風味が、もし日本の水で再現できないのであれば、ジークレフでの販売はやめにしようと思っていました。ただ買付けてきたものを売るだけでは、専門店としては失格だと思うからです。

しかし幸いなことに、杭州での抽出より、茶葉を多少多めにすれば、吉祥寺の水道水でもこの甘味はきちんと再現できることがわかりました。少量ずつしか入荷していませんので、インターネットでの販売は予定していませんが、来週中には店頭に並ぶものと思います。どうぞご期待ください。

お店からのご案内 > 中国茶・台湾茶 | - | -2004.05.07 Friday

インドのあるテイスターからダージ…

インドのあるテイスターからダージリンの状況についてのレポートが来ました。まずはその一部をご紹介しましょう。

(前略)4月中に、ダージリンのいくつかの農園を訪ねてまいりました。天候はすこぶる良好です。この時期は茶樹が十分な降雨と日光を得ることが重要ですが、今年はそれの条件が整い、現在のところセカンドフラッシュには期待が持てそうです。

セカンドフラッシュの収穫が始まる時期については、例年と大差なくなる見込みです。多くの農園では、5月20日から25日ごろに収穫が始まるのではないでしょうか。もちろんそれより早く収穫が始まる農園もいくつかはあるでしょうが、ピークは5月末ごろを予想しています。ピークの時期は今後の天候にも左右されます(以下略)。


そんなわけで、当初の予想よりは収穫のスタートは遅まる見込みとのことです。セカンドフラッシュの収穫の第一報は、このコーナーでもお伝えします。

ときに、既に入荷したグームティ農園のファーストフラッシュは、熟成が進んで素晴らしい風味となりました。メルマガでもお伝えしたシナモンのような香りも濃密に立ち、甘味も充実しています。

この紅茶、入荷当初の4月上旬は、ジークレフでは1ポット(350cc)に対し、4.2gで抽出していましたが、甘味が増した結果、現在では、4.8〜5.0gで抽出するようにしています。(抽出時間は5分です。)

昨年入荷した多くのダージリンは、5.5gで6分抽出でしたので、だいぶ量は少なめです。しかし、これは薄いというわけではなく、茶葉の中で味も香りもしない部分(ダージリンに特有のものです)があまりないためです。

抽出の時間を変えるとまだ火入れの苦味が多少感じられるため、まだこの先風味は変化するものと思われますが、ほぼピークに達したと考えてよいでしょう。

産地の息吹 > ダージリン | - | -2004.05.07 Friday

少々古いのですが、あるインドのテ…

少々古いのですが、あるインドのテイスターより、茶、カテキンがマイコプラズマ肺炎の予防に効果的である旨の論文の要旨が送られてきましたので、ちょっと和訳を掲載しておきます。ご興味ある方はご一読ください。

茶、及び茶カテキン((-)エピガロカテキンガレード(EGCg)及び、テアフラビンディガレート(TF3))の抗細菌性について調べたところ、緑茶及び紅茶は、肺を経由して感染するマイコプラズマ肺炎に対して、抗菌性を示した。

また、0.2%(500倍)に濃縮した紅茶及び緑茶の抽出液は、口腔、肺を経由するマイコプラズマに抗菌性を示したが、唾液腺を経由するマイコプラズマに対しては抗菌性を示さなかった。

プーアル茶の抽出液は、口腔、肺を経由するマイコプラズマに若干の抗菌性を示した。

緑茶から抽出した(-)エピガロカテキンガレード(EGCg)と、紅茶から抽出したテアフラビンディガレート(TF3)は、口腔、肺、唾液腺を経由するマイコプラズマに対して、ともに注目すべき抗菌性を示した。

この結果は、茶及び茶カテキンがマイコプラズマ肺炎の感染の予防に、有効であることを示している。

戸田、大久保 [Antimicrobial and microbicidal activities of tea and catechins against Mycoplasma][感染症学雑誌: vol.66:606-611; 1992]

「なんのこっちゃ」と思われる方も多いかもしれません。私もそうです。ちょっと調べたところ、昨年、マイコプラズマ肺炎は、過去に例を見ないほど流行したということで、そのような背景で、この論文がインドの業界紙に引用されたのでしょう。

ひとこと加えておくと、テアフラビンは、紅茶の中でも比較的水色の薄いダージリンやヌワラエリヤ、ないしその他の産地の旬のものに多い成分です。発酵の強い、水色の赤いお茶になると、徐々に減ってきます。

お茶を知る > お茶の豆知識 | - | -2004.05.06 Thursday

龍井茶のおいしさは、どうやら日本…

龍井茶のおいしさは、どうやら日本の水でもほぼ問題なく再現可能なようです。中国茶の、特に上質なものはどうしても、産地で味見をしてその場で買わなければいけないことが多いのですが、幸いなことに紅茶と違って、多少水質が違っても入り方はあまり変わらないことが多いようです。

龍井茶は「無味の味」といわれるように、薄い抽出の中で微妙に変化してゆく風味を楽しむのが醍醐味です。従って水のおいしさは味に強い影響を与えるはずなのですが、それでも問題なくおいしくはいる。これが銘茶というものなのかも知れません。

私の感触では、獅子峰、梅家塢、龍塢といった産地による味、香りの差は、やはり余り大きくないように思います。味に影響を最も与えるのは、摘んだ時期でしょう。同じ清明節の前でも、前半と後半では、多少甘みに差が出ます。清明節以降のお茶に関しては、最初はやはりおいしいのですが、時期が下るにつれ、風味はぐっと落ち込むようです。

品種についても、岩茶などと違って大きなこだわりはないようです。現在のところ龍井13号がよいとされていますが、これは病気や害虫への耐性が強いから。香りの特徴や、収穫量については、まだそれほど志向されていないようです。

一方、職人の腕の影響は大きいようです。そして優れた職人は、名産地に多い。そして名産地の名を高からしめるのに一役も二役もかっています。職人の腕のよしあしは出来上がった茶葉を見れば分かります。

ちなみに、よく中国茶の本で、龍井茶のグレードとして、蓮芯、雀舌といったことばが見られますが、最近はそういったグレード分けは余り見られなくなっているようです。

これは龍井茶のよしあしを決める最大の要素が、葉の見栄えから摘んだ時期に変わったから。最近は、明前茶の中でも細かくグレードわけされていますが、その基準は、何月何日に摘まれたかです。

産地の息吹 > 中国・台湾 | - | -2004.05.06 Thursday

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