和紅茶の製茶不良について

ジークレフでは、和紅茶のラインナップはさほど多くはないのですが、和紅茶の品質向上には、一定の貢献をしてきたと自負しています。それは、ジークレフがジャパンティーフェスティバルの発起人となり、プレミアムティコンテストという和紅茶のコンテストをスタートし、それを通じて和紅茶の生産者への働きかけを続けてきたからです。
今、非常に多くの生産者が和紅茶を手掛け始めていますが、まだまだ品質は玉石混交と言わざるを得ません。それ自体は、どこの国でもあることなので当然なのですが、日本ならではの製茶不良というものもあるので、今回は日本特有の製茶不良について触れてみようと思います。
製茶不良という用語について
まずは製茶不良とはどういうものかについてご説明しましょう。製茶不良ということばはちょっと強い用語ですが、実は製茶不良が皆無の紅茶というのはほとんどありません。多くても1%もないと思います。茶葉1枚1枚がすべて完璧に製茶できているかといえば、たくさんの芽の中には多かれ少なかれ、理想的な変化をたどらないものは出てくるものだからです。
問題なのは、製茶不良の在り方とその程度の大きさです。インドやスリランカでも、想定された芽のあり方に見合ったものがどの程度かを示すグッドリーフレートは、50-55%程度が普通と言われている通り、何かしらの不良を含むのは当たり前のことなのですが、その程度が甚だしいと、製品の品質として大きな問題があるということになります。このあと触れる施肥過多、過発酵は、日本においては生産者によっては100%に近い不良率であることが多いため、ここで取り上げていますが、過発酵などは部分的に発生することは海外産の紅茶でもままあります。
以下ではそれを踏まえて、和紅茶において特に問題の大きい製茶不良2種について考えてみましょう。
施肥過多
和紅茶には様々なタイプがありますが、皆さんは野菜スープの香りのする和紅茶をお飲みになったことがありますでしょうか。茶液の色は黄色がかった橙色であることが多く、うまみの強いタイプの和紅茶です。たいていは緑茶用品種を使用しています。 和紅茶専門店では、このタイプも個性のひとつとして扱っているところが少なくないと思いますが、ジークレフでは、これは製茶不良に分類しています。なぜならば、体がそのお茶を飲むのを拒むからです。
野菜スープの香りのする和紅茶で、うまみが強いものは、実はカップの紅茶がなかなか減りません。頭では美味しくないと思わなかったとしても、体が受け入れたがらず、手が伸びないからです。 香り自体も鼻に抜ける香りだけで構成されるわけではなく、鼻にいつまでも残る、くぐもる香りを少なからず含んでいます。鼻に残る香りは、基本的には飲み手に抵抗を感じさせる香りで、したがって一見嫌な感じがしなかったとしても悪臭です。
こうしたうまみの強い、野菜スープの香りのする和紅茶がどうして生み出されるかと言えば、それは窒素肥料の施肥が多すぎる園地の芽で製茶したからです。和紅茶は海外産の紅茶に比べ、多かれ少なかれ肥料は多めに使っているものですが、特に煎茶用の施肥を行っている園地の芽を紅茶にすると、けっこうな確率でこうした紅茶が出来上がります。 これは上記のように、一見して雑味がなくまろやかなように感じても、実際には体がその成分を欲していないために、結局は飲まれなくなります。こうした紅茶に触れると、和紅茶が、あるいは紅茶そのものが苦手と感じる方も出てくることから、ジークレフではこうした和紅茶は扱いませんし、生産者にも施肥過多である旨をフィードバックするようにしています。
解決方法としては、窒素肥料を土壌から抜いていくしかありません。これには時間がかかり、3年は必要だと言われています。煎茶用の園地の芽を紅茶にしても、多くは良い結果は得られないのです。 ちなみに、煎茶用の園地で紅茶をつくる生産者は、紅茶自体への造詣があまり深くない場合が多いので、ほかの製茶不良を併発しているケースも少なくありません。特に過醗酵になることが多いようです。
過発酵
施肥過多と並び、しばしば和紅茶に見られる欠点として、過発酵が挙げられます。文字通り、醗酵しすぎて美味しくなくなることです。
過発酵は、紅茶の製茶不良の中では比較的重大な不良に分類されます。なぜならば、風味が損なわれるだけでなく、飲むと胸やけを起こしたり、気持ち悪くなったりすることも少なくないからです。それゆえに紅茶鑑定の世界では、過発酵の紅茶は非常に低く評価されます。
しかし、そんな重大な製茶不良がなぜ日本ではよく起こるのでしょうか。それは作り手が、紅茶の色は赤いと思い込んでいるからです。 緑茶用の品種は、そもそも茶液に色を与える成分であるカテキン類が相対的に少ないようです。紅茶の茶液の色は、カテキン類の色が主となって形成されているのですが、そのカテキン自体が少ないのですから、醗酵が進んで適切な発酵度に達したとしても、茶液を赤くするまでは行かないことの方が多いです。 それを味わいや香りではなく色を判断基準として、しかも無理に赤くしようと発酵を進めれば、出来上がった紅茶は過発酵になってしまいます。
過発酵の紅茶は臭みがあるので、あまり飲みたい味にはなりません。また酸味も生じ、茶液は悪い意味でのとろみが生じます。英語ではStewy(シチューのような)と表現されます。 このような過発酵の紅茶は、当然売り物にすべきではありませんが、作り手や買い手の知識不足ゆえに、そのまま商品として販売されていることもあります。
その他の和紅茶にありがちな製茶不良
施肥過多、過発酵のふたつほど問題が大きくはないですが、他にも和紅茶に多く見られる製茶不良というものはいくつかあります。
例えば木茎や繊維の混入。これは海外産の紅茶では等級区分までの工程で除去されるものですが、和紅茶ではそれを知らずに取り除かないものがあります。また、たまに意図的に混入させているケースも見受けられます。これは飲む前に、乾燥茶葉を見ればわかりますが、入っているとひどく味わいを害します。
ほかにも萎凋不足は、大変よく見かける不良のひとつで、渋いというより苦いと感じるような強い苦渋味を伴ったり、夏の原っぱのような青臭いにおいを伴うなど、いくつかのパターンがあります。萎凋不足は、飲めないほどではないケースも多いので、製品として流通する割合も割と多いと感じられます。
まとめ
和紅茶の世界は注目度が高いためにプレーヤーが増えてきているのですが、その一方でまだ十分に情報が行き渡っておらず、よい紅茶とはどういうものか、よい和紅茶とはどういうものかというビジョンも、しっかり形成できている状況ではありません。こうつくれば美味しくなる、これはやってはいけない、という共通認識が作り手の間にもないのが実情です。
こうした中ですので、感度の高い飲み手の皆さんにも、ある程度その香味の理由がわかるようになれば、この状況を変えていく一助になるのではないかと思っています。特にビジネスとして和紅茶を扱う場合は、こういう紅茶がそのまま世に出ないようにゲートキーパーとしての役割を果たすのも、買い付け担当者の重要な責務ではないかと私は思います。この文章が、和紅茶への理解を深めるきっかけのひとつになれば幸いです。
お茶を知る > 淹れ方・楽しみ方 | - | trackbacks (0)2025.06.16 Monday
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お店からのご案内 > 従業員募集について | - | trackbacks (0)2025.06.04 Wednesday