おいしい紅茶とは何か3 渋みのパラドックス

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前項(おいしい紅茶とは何か2)で掘り下げたように、渋み(良質な渋み)は、嗜好品たる飲み物に魅力を与える、おいしさの鍵であると私は考えています。しかし、渋みにはポジティブな渋みもあれば、ネガティブな渋みもあります。そして、ポジティブな渋みでも、量次第ではネガティブな渋みになってしまうこともあります。

ジークレフでは、多くの紅茶の抽出について、「熱湯で150�佞砲弔�、茶葉2gを使用し、5分間抽出する」ことをお薦めしています。大抵はFTGFOP1などの大きさの茶葉の場合ですが、この場合、ポジティブな渋みがほどよく抽出され、甘味も香りもよく感じられるからです。

ところで、もしこの条件で茶葉を2gではなく、3g、もしくはそれ以上投入したとしたら、甘味と香りはどうなるでしょうか?

実は、東大の講演会でこの問いを投げかけたところ、甘味、香りとも強く感じるという意見と、あまり感じられなくなるという意見に分かれました。

科学的に考えれば、甘味にせよ香りにせよ、分子が五感に訴えるのですから、茶葉量が増えれば、抽出される分子量が増え、甘味も香りも強く感じられるはずです。

しかし、実際に味わってみると、どういうわけか、甘味も、香りもさほど感じません。ただただ強い渋みだけが感じられ、飲みにくくなってしまいます。

科学的な予想と、実際に起こっている現象が異なっているのですから、これはひとつのパラドックスであると言えます。

さて、これは何が起こっているのでしょう。これもあくまで私見ですが、渋みが強いと感じた瞬間、人間の脳が感覚を遮断し、甘味や香りを感じないように作用しているのだと思います。以前脳科学者の小倉明彦阪大名誉教授にこの現象について質問したところ、「おそらく感覚遮断が起こっているのではないか」という答えを頂きました。

なぜ渋みを強く感じると、脳が好ましい味覚を遮断するのか?

これは全くの私見なのですが、きっと遠い昔、人間がまだ人間ですらなかったころ、ヒトは食べものを実際に食べてみて、食べられるか、食べられないかを判断しており、人間にとって毒となる恐れのある味覚を感じた時に、それをおいしいと感じて体に入れてしまわないように、この感覚遮断という現象が起こったのだろうと思っています。

ところで、これについてインターネットで調べてみると、苦味の強いコーヒーを飲んだあとに甘いケーキを食べると、甘味をさほど感じられなくなる現象について、「甘味と苦味の味蕾が競合しているので甘味が阻害される」という説明が出てきます。

しかしながら、この説明では嗅覚まで遮断されることは説明できないので、まだこの現象はきちんと科学的に説明されていないのかもしれません。私自身はまだこれをきちんと説明した文献に行き当たっていないので、もしご存じの方がいらしたらぜひご教授ください。

お茶を知る > 淹れ方・楽しみ方 | - | trackbacks (0)2025.05.27 Tuesday

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