ダージリン、アッサムの多煎抽出の茶器について

先週からダージリン、アッサムの多煎抽出を推奨しているジークレフですが、早速実践されている方の中には、きっと茶器にお困りの方も少なくないのではないかと推察します。個人的なお薦めは、ちょっと古い急須。めぼしい骨董品店、古道具店などでちょっと漁れば、とても上質で小ぶりな急須が案外お手頃で入手できるはずです。

急須
上の写真は九谷焼きの赤絵。たぶん明治期のものだと思います。お茶碗が小ぶりなのもポイントで、100cc程度のものは、現代ではあまり使われないので、案外需給の関係で安価なのです。器が5客揃っているとちょっとお値段が張りますが、そうでなければ更に割安だったりします。ティーカップもそうですが、100年前程度の、ちょっと古い時代のものがねらい目です。ヤフオクもよいかも知れません。

茶壷
急須の他には、もちろん中国茶、台湾茶用の茶壷や蓋碗も便利です。茶壷の場合、どんぶりのような大き目の鉢を茶舟にするのがオススメで、この茶舟があるとデスクの脇に電気ケトルをセットして、気楽にお茶淹れできます。お湯を注ぐときにこぼす心配がないからです。電気ケトルを95℃などの保温にしておけば、飲みたいときにほんの数秒で紅茶が入るというわけです。

茶舟3
茶舟にする鉢は例えばこんなのです。これは景徳鎮ですが、確か1000円前後で古道具屋で購入しました。日本のものでも、やはり明治期ぐらいのものは安価できれいなものが多いです。(それ以前は、あまり大きな器は作られていなかったようです。)

こうした茶器をちょっとそろえるだけで、俄然お茶淹れが楽しくなります。新たな淹れ方には新たな茶器揃え。ぜひお気に入りの茶器を探してみてください。

お茶を知る > 淹れ方・楽しみ方 | - | trackbacks (0)2018.04.27 Friday

紅茶の抽出、そして鑑定について

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今日はちょっと落ち着いて、紅茶の抽出や鑑定についてお話ししてみたいと思います。

インド産紅茶であるダージリン、アッサムを中国茶器や急須で、何煎も淹れていくということは、製茶、鑑定、抽出の3つの技術がぴったりとマッチした時に可能になります。実際、10煎とれるアッサムは数年前にも生産されていたにもかかわらず、その時は誰もそのことに気づきませんでした。これは、その時点ではその抽出技術が確立されておらず、したがって多煎抽出が可能であると見抜く鑑定技術も当然存在しません。ですから、数年前には多煎抽出のできるアッサムは、存在しなかったということになります。

しかし、ちょっと立ち止まってみれば、中国紅茶や台湾紅茶は、昔から多煎抽出は可能でした。そして近年生産される和紅茶にも、それが可能なものが存在します。であれば、インド産の紅茶にもそうしたことが可能なお茶があるのは当たり前の話です。

しかし実際には、インドやその他の南洋の紅茶の製法では、多煎抽出はそうそう簡単にいくものではありませんでした。これは、ここ十数年ほどの、主にダージリンやネパールで進んだ製茶工程の深化によって可能になったもので、それ以前はほとんど多煎できる紅茶はなかったと言えます。

私がダージリンやネパールを茶壷や蓋碗を使って淹れ始めたのは、もうだいぶ前のことですが、それは主に2008年に考案した「二重抽出」という技術を使ったものでした。これは一言でいえば、1煎目、2煎目を共に濃い目に抽出し、ブレンドすることで、従来の淹れ方よりも早く、そして香り高く紅茶を抽出し、しかもその味わいも濃厚になるというものでした。

しかし、本当に精度の高い紅茶であれば、特にブレンドをする必要はなく、1煎目、2煎目を抽出したら、各々そのまま楽しめるはずです。そのことは、二重抽出を考案した当時から抱えていた思いでしたので、私はずっとこの10年間、そうしたお茶を探していました。今回ご紹介したダージリン、アッサムのファーストフラッシュは、そういう意味で精度の高い製茶が施されていた、ということに他なりません。実際の処、大きな声でアナウンスはしなかったまでも、これまでに入荷したダージリンでもそれが可能と言ってもよいお茶は存在しました。ただ、明らかにそれが普通の淹れ方よりも価値があると言えるかわからなかったため、公にしなかったのです。

しかし、この精度の高い製茶が施されたものを手にし、あれこれと探求してみた時、私自身が想像していたよりもずっとお茶の世界が広がっていたことがわかりました。昨日(4/20)のメールマガジンでご紹介したような、90℃に湯温を下げて淹れる抽出方法、そして数年以上にわたる長期熟成などはその一例です。おそらく、まだ見つかっていない新たな楽しみ方が隠されており、さほど時間もかからずにそれを見出すことができるのではないかと思っています。

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ところで、ダージリンやネパールについては先ほど説明した通り、近年の製茶技術の進歩といえますが、アッサムについてはどうでしょうか?実は、今回のマンガラム農園などが10煎にも及ぶ抽出ができるお茶に仕上がったのは、ほとんど偶然の産物と言ってもいいのかも知れないと思っています。今のところアッサムの生産者が、ダージリンのような形で既存の製茶技術に変化を加え、本格的な製茶において精度を高めているという話はおそらくありません。そうではなく、本当にたまたま条件が揃ったときに、今回のような紅茶が見つかるのです。ですから、数年に一度という言い方は、別に誇張ではありません。多煎抽出ができるとか、長期熟成ができるとかは知らなかったとはいえ、私はずっと、同じタイプの紅茶を探してきたのですから。

アッサムについては、多煎抽出はまだしも、長期熟成については、本当に様々な偶然が重なって、見出すことができた話です。社内外のサポートにも恵まれて、数年前に買い付けた同タイプのアッサムが、大変よい保存状態で保管されていたものを、適切なタイミングで見出すことができたため、その熟成した風味を体感することができたのです。数年を経たアッサムは、これが本当にアッサムなのかというほど、違う風味へと変貌しています。しかもその在り方は一通りではありません。

製造においてはまだ偶然とはいえ、テイスターとしての研鑽を積めば、どうやらそういった紅茶を見逃さずに買い付けることは不可能ではないようです。そうした見通しが立ったからこそ、この度、安定した多煎抽出のレシピを確立し、皆様に共有することができたのです。

新たな抽出方法は、新たな楽しみ方、新たな茶文化を生みます。ぜひこれからも、皆さんと一緒に新たな茶文化を創り出し、そして楽しみたいと思います。

2018.4.21 川崎 武志

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お茶を知る > 淹れ方・楽しみ方 | - | trackbacks (0)2018.04.21 Saturday

『紅茶 味わいの「コツ」』刊行となりました

紅茶 味わいのコツ3
おかげさまで、私川崎と、紅茶専門店シルバーポットの中野地さん、紅茶専門店ティーブレイクの水野さんとの共著となります紅茶本、『紅茶 味わいの「コツ」』が刊行となりました。

この本は、最新の紅茶の知識を「シングルオリジンティ」を中心に据えて執筆したものです。ですから、紅茶の淹れ方、保存の仕方や、望ましいポットやカップの形状といった身近なところから、産地の概説や、香味成分、テイスティングの考え方などといったプロが知りたい部分までを網羅しています。

本書の執筆にあたっては、紅茶にかかわるすべてについて、新たに一から問い直すという作業を行いました。こうした作業の帰結として、本書の中では、既存の紅茶本で語られてきた「紅茶」の在り方とは少々異なる、新たな紅茶についての知も盛り込まれる格好になったのではないかと思います。

もちろん内容としては、紅茶初心者の方がイチから学べるようになっていますが、上記のような理由から、紅茶に対して愛情を注ぎ、日常のシーンの中に紅茶があるような皆様にも、きっと楽しんでいただけるのではないかと思います。ぜひ紅茶ファンの皆様には、本書をご一読いただければ幸いです。

なお『紅茶 味わいの「コツ」』は、各書店の他、ジークレフ各店舗でもお買い求めいただけます。ジークレフの店頭でお買い上げいただいたお客様につきましては、ささやかではありますが、いつものように10%分のポイントが付きます。ぜひご利用ください。

お茶を知る > 淹れ方・楽しみ方 | - | trackbacks (0)2017.11.17 Friday

二重抽出での紅茶のテイスティングを開始しました

今日から吉祥寺本店では、二重抽出法によるお茶のご案内と二重抽出ティーバッグの発売を開始します。見たことないぐらいマスカテルの香るダージリンや、キレのある美しい風味のアッサム。二重抽出によって、今までの紅茶が体験したことのない風味に変貌を遂げます。ぜひ新しい風味を体感してみてください。

お茶を知る > 淹れ方・楽しみ方 | - | trackbacks (0)2011.02.15 Tuesday

野点その3:ギンモクセイのお茶

秋の野を歩いていると、なにやら甘い香りの立ち込める一角があり、思わず足を止めて香りの元を探しました。ふと路辺を見ると、立派なギンモクセイがいっぱいに花をつけています。

小さいけれどきれいな花を何輪か拾って、お茶に淹れてみました。
ギンモクセイのお茶
濃密な甘い香りは、高山茶の香気によく馴染みます。ほんの一厘を浮かべただけでも、品のよい甘味が茶液にも浸透し、ギンモクセイの香りは体内にまで広がっていきます。

初夏のジャスミン、10月のキンモクセイ。そして11月のギンモクセイ。
野の花々は、お茶淹れに文字通り花を添えてくれます。

お茶を知る > 淹れ方・楽しみ方 | - | trackbacks (0)2009.11.15 Sunday

紅茶の野点 その2

今週末も、土日それぞれ日帰りで野点をして参りました。
蜜香紅茶

今日は、小仏峠の湧き水を汲み、奥高尾の一丁平付近でお茶淹れです。
紅葉はまさに見ごろ。野生のほおづきもみつけました。
高山茶

帰り道。夕焼けに浮かぶ富士山のシルエットがきれいでした。
夕焼けの富士

こちらは土曜日に行った、奥多摩でのハイキングの合間の野点です。場所は渓流沿いの大岩の上。サングマ農園のダージリンも、こうして蓋碗で淹れます。水は、古里から鳩ノ巣の道すがらに見つけた清水を使いました。
蓋碗でダージリン

こういう風景を眺めながらのお茶淹れは、味わいもまた格別です。
奥多摩にて

これから紅葉はどんどん里に下りてきます。
秋の野点シーズンは、今が盛りです。
紅葉

お茶を知る > 淹れ方・楽しみ方 | - | trackbacks (0)2009.11.08 Sunday

紅茶の野点

個人的なことで恐縮ですが、最近野点が面白くなり、休みとなればリュックにアウトドア用のバーナーと茶器を詰めて山へ行っています。

山では清水も湧き、きれいな空気ときれいな水で、本当に気持ちのよいお茶が楽しめます。紅葉も始まってきており、そろそろ標高500-1000mぐらいが見ごろになってきていますが、陽気も穏やかで外でも苦になりません。こと野点に関しては、今が絶好のシーズンと言えましょう。

お気に入りのお茶とお菓子を持って、青空のもとで楽しむ一杯。その味わいは格別です。
森

※今更ではありますが、前のエントリ「ニルギリと霧が峰」に、霧が峰の写真を追記してみました。ご興味のある方は見比べてみてください。

お茶を知る > 淹れ方・楽しみ方 | - | trackbacks (0)2009.11.01 Sunday