「水で口を直しながら紅茶を味わう…
「水で口を直しながら紅茶を味わうとどうなるか?」前回の茶飲み話では、そんな素朴な疑問を掲げてみました。今回はその疑問について、大まかにご報告します。
結論としては、下記の通り。
・水を飲みながら紅茶を味わうことは、あまりおすすめできない。
・テイスティングの際に、水で口直しをすることは、決して行ってはいけない。
なぜか?水の効果によって、紅茶の苦味(渋みではありません)が強調されてしまい、甘味などほかの要素が分からなくなってしまうのです。よくカレーを食すときに、水を途中で飲むと、そのあと辛味だけが舌を突きとても食べにくくなってしまうなどということが起きますが、それと同じ原理のようです。
茶葉によっても影響に違いはありそうですので、詳細はまた後日報告します。
結論としては、下記の通り。
・水を飲みながら紅茶を味わうことは、あまりおすすめできない。
・テイスティングの際に、水で口直しをすることは、決して行ってはいけない。
なぜか?水の効果によって、紅茶の苦味(渋みではありません)が強調されてしまい、甘味などほかの要素が分からなくなってしまうのです。よくカレーを食すときに、水を途中で飲むと、そのあと辛味だけが舌を突きとても食べにくくなってしまうなどということが起きますが、それと同じ原理のようです。
茶葉によっても影響に違いはありそうですので、詳細はまた後日報告します。
お茶を知る > お茶の豆知識 | - | -2004.01.26 Monday
ここ何回か、だいぶ詳細に紅茶の淹…
ここ何回か、だいぶ詳細に紅茶の淹れ方について紹介してきました。あるいはマニアックに過ぎはしないかと心配しましたが、店頭でも好意的なご意見をお寄せいただきました。またいつか、このコーナーで、テイスティングやその他の領域についても、ある程度掘り下げたレポートをご紹介させていただきますね。
話はかわりますが、最近私は個人的に日本酒を飲む機会が増えているのですが、昨日は、信州のあるつくり手による大吟醸をいただきました。最近の日本酒は、酵母や酒米などもバラエティに富んでいるのですが、長野の地酒に使われるある酵母を使ったお酒の香りが、ダージリンやウヴァの香り、あるいはプーアル茶の樟香と相通ずるものがある感じたからです。
飲んでみると、確かに清涼なすぅっとする香りが口の中に広がります。うまい!そしてもう一口、酒盃をすすります。
「あれ?」不思議なことに、一杯目ほどの清涼感がありません。おかしいと思って、さらにもう一杯いただくと、なんだか物足りない感じさえしてしまいます。
思い当たって、そばにあったミネラルウォーターを口に含み、再度チャレンジ。するとはっきりと、一杯目の清涼な香りが再現されました。どうやらこの香り、あっというまに口が慣らされてしまい、最初の印象を保ちつづけるには、チェイサー(水)が必要なようなのです。最近の吟醸酒を評して、「利くための酒であって、食事をしながら楽しむ酒ではない」とする意見を耳にすることがありますが、これではそういわれても仕方ないかも知れません。
振り返って紅茶のことを考えてみると、われわれテイスターはふだん一杯ごとに口をゆすいでテイスティングするようなことはしません。と、いうことは経験的に、紅茶の香気成分は日本酒に比べ、そう簡単に慣らされるような香りではないことがわかります。
でも、本当のところはどうなんでしょう?これを確かめるためには、とりあえず紅茶を一杯淹れて、水を使って口を直しながら味わってみればよいわけです。この話自体、この文を書きながら思いついたことなので、まだ試していませんが、次回にでも結果をご報告しますね。
・・・また今日もマニアックになってしまいました。すみません。
話はかわりますが、最近私は個人的に日本酒を飲む機会が増えているのですが、昨日は、信州のあるつくり手による大吟醸をいただきました。最近の日本酒は、酵母や酒米などもバラエティに富んでいるのですが、長野の地酒に使われるある酵母を使ったお酒の香りが、ダージリンやウヴァの香り、あるいはプーアル茶の樟香と相通ずるものがある感じたからです。
飲んでみると、確かに清涼なすぅっとする香りが口の中に広がります。うまい!そしてもう一口、酒盃をすすります。
「あれ?」不思議なことに、一杯目ほどの清涼感がありません。おかしいと思って、さらにもう一杯いただくと、なんだか物足りない感じさえしてしまいます。
思い当たって、そばにあったミネラルウォーターを口に含み、再度チャレンジ。するとはっきりと、一杯目の清涼な香りが再現されました。どうやらこの香り、あっというまに口が慣らされてしまい、最初の印象を保ちつづけるには、チェイサー(水)が必要なようなのです。最近の吟醸酒を評して、「利くための酒であって、食事をしながら楽しむ酒ではない」とする意見を耳にすることがありますが、これではそういわれても仕方ないかも知れません。
振り返って紅茶のことを考えてみると、われわれテイスターはふだん一杯ごとに口をゆすいでテイスティングするようなことはしません。と、いうことは経験的に、紅茶の香気成分は日本酒に比べ、そう簡単に慣らされるような香りではないことがわかります。
でも、本当のところはどうなんでしょう?これを確かめるためには、とりあえず紅茶を一杯淹れて、水を使って口を直しながら味わってみればよいわけです。この話自体、この文を書きながら思いついたことなので、まだ試していませんが、次回にでも結果をご報告しますね。
・・・また今日もマニアックになってしまいました。すみません。
お茶を知る > お茶の豆知識 | - | -2004.01.24 Saturday
今日は産地別の紅茶のおいしい淹れ…
今日は産地別の紅茶のおいしい淹れ方の4回目。ニルギリとセイロン茶についてみていくこととしましょう。これらの産地の淹れ方は簡単なので、ちょっと掘り下げて詳しくみていくことにします。
セイロンとニルギリ地方では、今まで見てきたダージリン、アッサム、中国各地のモンスーン地域の紅茶とは違い、一年を通して茶摘みが行われています。インドの南部、デカン高原の西側に広がるニルギリと、セイロン島の西側斜面に位置するディンブラ・ヌワラエリヤは、今時分から3月ぐらいまでが旬。逆に、セイロン島の山岳部東側の産地であるウヴァは、7月から8月が香りのピークです。
製茶の照準が、FTGFOP1のような大きな葉ではなく、BOPのような細かい葉に照準をおいているのも、これらの産地の特徴。ですからこれらの産地については、葉が大きければおいしいと考えるのは誤りです。通常期であれば、BOP(0.85~1.40ミリ)かBOPF(0.50~0.85ミリ)。葉がやわらかくなる旬の時期でも、FBOP(1.70~2.00ミリ)あたりまでを選定しておいたほうが無難です。というのは、農園ではこれらグレードに照準をあわせて発酵時間を決めているために、より大きなグレードの紅茶では発酵が弱すぎ、味が出にくいのです。
セイロン紅茶やニルギリをおいしく淹れるためには、日本の水はとても適しています。通常の水道水や、安価な浄水器を通した水であれば、今までの標準の淹れ方同様、沸騰したお湯で150ccに対して、茶葉2グラム。抽出時間は3分が適正です。それより長く蒸らせばまろやかみが増しますので好き好きですが、短いのはおすすめしません。甘み成分が抽出しきれないために、酸味の強い茶液になったり、苦めにはいったりします。
ここで、セイロン、ニルギリに限らず、一般的な抽出上の注意をひとつ。
お湯を高いところから注いでいる方は、一度逆に、出来るだけポットに近づけて優しくいれることを試してみて下さい。同様に、ポットの中のお湯を、はしやスプーンでかき混ぜている方も、一度はそれをやめてみることをおすすめします。
何故か?これらの行為は、茶葉の繊維を無用に痛めつけ、通常であれば2煎しなければ出ないような苦味を抽出してしまうのです。セイロン茶やニルギリの個性は、その滑らかさにありますから、わざわざここで苦味を引き出すのは、もったいないのではないでしょうか。
更に、滑らかさをより追求する凝った淹れ方をするために、シーガルⅣのような高価な浄水器の力を借りるのも一興です。ある種の浄水器は水をより滑らかにし、Phを上げます。
水のPhを上げるとどうなるか?紅茶の香りがよくたつわりには水色と味が出なくなります。逆にPhを下げると、ポリフェノールの抽出が進み、香りよりも、より水色と味に力点がおかれるようになります。
そこで、それを逆手にとって、Phを上げて味を意図的に出にくくし、抽出する茶葉の量を1.3~1.5倍に濃くしてやるのです。すると、同じ味の強さであるにも関わらず、より濃厚で滑らかな、香り高い紅茶をつくりだすことができるのです。なおこの方法は、ダージリンでは決してオススメしません。風味のバランスが壊れてしまいます。
さて、以上のようにみていくと、紅茶のどのような風味を引き出したいかによって、それに見合った工夫がいろいろあることが見えてくるでしょう。まろやかな風味にしたいのか、飲みごたえを出したいのか、香りを最大限に引き出したいのか、さっぱりと味わいたいのか。そうした好みによって、同じ茶葉でも異なる抽出方法というのがありうるわけです。
我々日本人は、古来よりいろいろなお茶に接し、さまざまな淹れ方を実践してきました。その蓄積は、紅茶にだって活かされてしかるべきです。そして、消費者である皆さんの紅茶の楽しみ方は、我々のようなプロを通じて産地にフィードバックされ、次世代の紅茶づくりへと活かされるのです。
セイロンとニルギリ地方では、今まで見てきたダージリン、アッサム、中国各地のモンスーン地域の紅茶とは違い、一年を通して茶摘みが行われています。インドの南部、デカン高原の西側に広がるニルギリと、セイロン島の西側斜面に位置するディンブラ・ヌワラエリヤは、今時分から3月ぐらいまでが旬。逆に、セイロン島の山岳部東側の産地であるウヴァは、7月から8月が香りのピークです。
製茶の照準が、FTGFOP1のような大きな葉ではなく、BOPのような細かい葉に照準をおいているのも、これらの産地の特徴。ですからこれらの産地については、葉が大きければおいしいと考えるのは誤りです。通常期であれば、BOP(0.85~1.40ミリ)かBOPF(0.50~0.85ミリ)。葉がやわらかくなる旬の時期でも、FBOP(1.70~2.00ミリ)あたりまでを選定しておいたほうが無難です。というのは、農園ではこれらグレードに照準をあわせて発酵時間を決めているために、より大きなグレードの紅茶では発酵が弱すぎ、味が出にくいのです。
セイロン紅茶やニルギリをおいしく淹れるためには、日本の水はとても適しています。通常の水道水や、安価な浄水器を通した水であれば、今までの標準の淹れ方同様、沸騰したお湯で150ccに対して、茶葉2グラム。抽出時間は3分が適正です。それより長く蒸らせばまろやかみが増しますので好き好きですが、短いのはおすすめしません。甘み成分が抽出しきれないために、酸味の強い茶液になったり、苦めにはいったりします。
ここで、セイロン、ニルギリに限らず、一般的な抽出上の注意をひとつ。
お湯を高いところから注いでいる方は、一度逆に、出来るだけポットに近づけて優しくいれることを試してみて下さい。同様に、ポットの中のお湯を、はしやスプーンでかき混ぜている方も、一度はそれをやめてみることをおすすめします。
何故か?これらの行為は、茶葉の繊維を無用に痛めつけ、通常であれば2煎しなければ出ないような苦味を抽出してしまうのです。セイロン茶やニルギリの個性は、その滑らかさにありますから、わざわざここで苦味を引き出すのは、もったいないのではないでしょうか。
更に、滑らかさをより追求する凝った淹れ方をするために、シーガルⅣのような高価な浄水器の力を借りるのも一興です。ある種の浄水器は水をより滑らかにし、Phを上げます。
水のPhを上げるとどうなるか?紅茶の香りがよくたつわりには水色と味が出なくなります。逆にPhを下げると、ポリフェノールの抽出が進み、香りよりも、より水色と味に力点がおかれるようになります。
そこで、それを逆手にとって、Phを上げて味を意図的に出にくくし、抽出する茶葉の量を1.3~1.5倍に濃くしてやるのです。すると、同じ味の強さであるにも関わらず、より濃厚で滑らかな、香り高い紅茶をつくりだすことができるのです。なおこの方法は、ダージリンでは決してオススメしません。風味のバランスが壊れてしまいます。
さて、以上のようにみていくと、紅茶のどのような風味を引き出したいかによって、それに見合った工夫がいろいろあることが見えてくるでしょう。まろやかな風味にしたいのか、飲みごたえを出したいのか、香りを最大限に引き出したいのか、さっぱりと味わいたいのか。そうした好みによって、同じ茶葉でも異なる抽出方法というのがありうるわけです。
我々日本人は、古来よりいろいろなお茶に接し、さまざまな淹れ方を実践してきました。その蓄積は、紅茶にだって活かされてしかるべきです。そして、消費者である皆さんの紅茶の楽しみ方は、我々のようなプロを通じて産地にフィードバックされ、次世代の紅茶づくりへと活かされるのです。
お茶を知る > 淹れ方・楽しみ方 | - | -2004.01.21 Wednesday
先日からダージリン、アッサムのお…
先日からダージリン、アッサムのおいしい入れ方についてコメントしてきましたが、今日は第三弾。中国紅茶についてです。
中国紅茶の主な産地は、キームン、雲南、武夷山(元祖のラプサンスーチョンです)、四川など。それに産地は雲南や広東など複数ありますが、ライチ紅茶も忘れてはいけません。
これらの紅茶は大別して工夫紅茶と、分級紅茶に分かれます。大雑把にいえば工夫紅茶が大きな茶葉、分級紅茶が細かい茶葉と思っていただければ結構です。
このうち、より抽出に気を使っていただきたいのが工夫紅茶。特にキームンでいえば特級、ほかの産地でもそれに相当するクオリティ以上のものです。
これらの紅茶に共通する特徴は、耐杯が利くこと。つまり、2煎目、3煎目まで楽しめるのです。これは、紅茶の常識から言えば意外かも知れませんが、中国茶として見ると当たり前のこと。1煎で飲みきることなど、中国の作り手はハナから考えていないのです。
この場合、一般的な紅茶の淹れ方とは、当然抽出時間や茶葉の量も変わってきます。通常の淹れ方が熱湯150ccに対し、茶葉2gで3~5分抽出だとすると、茶葉3gで2分抽出(2~3煎可能)ないし、茶葉5gで、1分抽出(3~4煎可能)が工夫茶の淹れ方。中国国内では一般的に、最も香りと風味のよい1分抽出で供されます。使うのはテイスティングカップではなく蓋碗。洗茶をする場合もありますし、抽出のはじめに茶液の表面のアクを取り除く作業なども行います。
アク抜きはできればした方がよいですが、洗茶は好みの問題でしょう。
洗茶を行うと甘みは少し抜けますが、よりクリアな風味になります。
このような工夫茶の淹れ方で抽出するとお茶の風味はどうなるでしょう。まず、香りは濃密で、素晴らしく立ち上がります。そして甘みとまろやかみが最大限に抽出されます。
一方、苦味とか渋みは、あまり出ません。中国紅茶の場合、苦味成分や、渋み成分は、水に溶けにくく、長時間の抽出によってはじめて出てくるのです。そしてそれらは、中国的な味覚ではよしとされないため、滑らかな口当たりで甘みがあふれ、華やかな香りを最大限に引き出すべく、上記のような抽出方法がとられるのです。
(ちなみに、中国紅茶の価格による品質の差は、通常の淹れ方では分かりにくいのですが、工夫茶で淹れるとはっきりとその差がわかります。逆にいれば、高級な中国茶ほど、工夫茶で淹れるべきだということになります。)
これらを家庭で実践する場合、蓋碗がなくても、茶漉しつきのポットがあれば十分です。急須で淹れてもまったく問題はありません。国産の急須の常滑焼きは、中国の宜興茶壷と土の性質が似ているのです。逆に急須で淹れることを前提に考えるのであれば、抽出温度が熱湯なほかは、煎茶の淹れ方と同じでよいと思っていただければけっこうです。
次に、工夫茶の淹れ方ではなく、一般的な淹れ方で飲む際の注意点にも少し触れておきましょう。中国紅茶はどれもミルクティにもよくあうのですが、ミルクなら工夫茶で淹れる必要はありません。
この場合、まずは保温をきちんと行うこと。
そして、計量がシビアにできない環境ではきもち濃い目の抽出を行い、濃すぎる場合は、あとからお湯で調整すること。
抽出は長い分にはいくらでも結構です。10分以上抽出すると、前述の説明では渋みが出そうですが、Phが下がりよりポリフェノールが抽出される結果、まろやかみが勝ちますので、あまり渋いとは感じないはずです。
ただしミルクティの場合、ある程度アクがあったほうがよいと考える方は多いでしょう。その場合、5分程度の抽出で香りを保ちつつ、あえて骨太な風味にするのがオススメです。
最後に中国紅茶の保存の方法について。中国紅茶は一般に品質の保持が非常によく、摘み取ってから1年経過してもほとんど風味に変化はありません。これは焙煎を強く行っているからです。ですから、保管については常温で充分。むしろ湿気の吸収に注意を払ってください。
中国紅茶の主な産地は、キームン、雲南、武夷山(元祖のラプサンスーチョンです)、四川など。それに産地は雲南や広東など複数ありますが、ライチ紅茶も忘れてはいけません。
これらの紅茶は大別して工夫紅茶と、分級紅茶に分かれます。大雑把にいえば工夫紅茶が大きな茶葉、分級紅茶が細かい茶葉と思っていただければ結構です。
このうち、より抽出に気を使っていただきたいのが工夫紅茶。特にキームンでいえば特級、ほかの産地でもそれに相当するクオリティ以上のものです。
これらの紅茶に共通する特徴は、耐杯が利くこと。つまり、2煎目、3煎目まで楽しめるのです。これは、紅茶の常識から言えば意外かも知れませんが、中国茶として見ると当たり前のこと。1煎で飲みきることなど、中国の作り手はハナから考えていないのです。
この場合、一般的な紅茶の淹れ方とは、当然抽出時間や茶葉の量も変わってきます。通常の淹れ方が熱湯150ccに対し、茶葉2gで3~5分抽出だとすると、茶葉3gで2分抽出(2~3煎可能)ないし、茶葉5gで、1分抽出(3~4煎可能)が工夫茶の淹れ方。中国国内では一般的に、最も香りと風味のよい1分抽出で供されます。使うのはテイスティングカップではなく蓋碗。洗茶をする場合もありますし、抽出のはじめに茶液の表面のアクを取り除く作業なども行います。
アク抜きはできればした方がよいですが、洗茶は好みの問題でしょう。
洗茶を行うと甘みは少し抜けますが、よりクリアな風味になります。
このような工夫茶の淹れ方で抽出するとお茶の風味はどうなるでしょう。まず、香りは濃密で、素晴らしく立ち上がります。そして甘みとまろやかみが最大限に抽出されます。
一方、苦味とか渋みは、あまり出ません。中国紅茶の場合、苦味成分や、渋み成分は、水に溶けにくく、長時間の抽出によってはじめて出てくるのです。そしてそれらは、中国的な味覚ではよしとされないため、滑らかな口当たりで甘みがあふれ、華やかな香りを最大限に引き出すべく、上記のような抽出方法がとられるのです。
(ちなみに、中国紅茶の価格による品質の差は、通常の淹れ方では分かりにくいのですが、工夫茶で淹れるとはっきりとその差がわかります。逆にいれば、高級な中国茶ほど、工夫茶で淹れるべきだということになります。)
これらを家庭で実践する場合、蓋碗がなくても、茶漉しつきのポットがあれば十分です。急須で淹れてもまったく問題はありません。国産の急須の常滑焼きは、中国の宜興茶壷と土の性質が似ているのです。逆に急須で淹れることを前提に考えるのであれば、抽出温度が熱湯なほかは、煎茶の淹れ方と同じでよいと思っていただければけっこうです。
次に、工夫茶の淹れ方ではなく、一般的な淹れ方で飲む際の注意点にも少し触れておきましょう。中国紅茶はどれもミルクティにもよくあうのですが、ミルクなら工夫茶で淹れる必要はありません。
この場合、まずは保温をきちんと行うこと。
そして、計量がシビアにできない環境ではきもち濃い目の抽出を行い、濃すぎる場合は、あとからお湯で調整すること。
抽出は長い分にはいくらでも結構です。10分以上抽出すると、前述の説明では渋みが出そうですが、Phが下がりよりポリフェノールが抽出される結果、まろやかみが勝ちますので、あまり渋いとは感じないはずです。
ただしミルクティの場合、ある程度アクがあったほうがよいと考える方は多いでしょう。その場合、5分程度の抽出で香りを保ちつつ、あえて骨太な風味にするのがオススメです。
最後に中国紅茶の保存の方法について。中国紅茶は一般に品質の保持が非常によく、摘み取ってから1年経過してもほとんど風味に変化はありません。これは焙煎を強く行っているからです。ですから、保管については常温で充分。むしろ湿気の吸収に注意を払ってください。
お茶を知る > 淹れ方・楽しみ方 | - | -2004.01.20 Tuesday
先日、熊崎 俊太郎さんとお電話す…
先日、熊崎 俊太郎さんとお電話する機会がありました。現在あたらしい本を執筆中とのこと。最近どうしてるのかなぁ~と思っていた矢先のことなので、喜ばしい限りです。
熊崎さんの本は、今までの2冊も、1ページごとにきちんと経験と見識に裏打ちされており、いつも感心させられます。私とはアプローチの仕方は違いますが、おいしい紅茶をひとりでも多くの人にお届けしたいという思いは、熊崎さんの発するひとことひとことからにじみ出ており、私もそういう熊崎さんの姿勢から、よい意味での刺激をもらっています。力作を期待したいと思います。
熊崎さんの本は、今までの2冊も、1ページごとにきちんと経験と見識に裏打ちされており、いつも感心させられます。私とはアプローチの仕方は違いますが、おいしい紅茶をひとりでも多くの人にお届けしたいという思いは、熊崎さんの発するひとことひとことからにじみ出ており、私もそういう熊崎さんの姿勢から、よい意味での刺激をもらっています。力作を期待したいと思います。
トリビア | - | -2004.01.18 Sunday
前回の茶飲み話では、ダージリンの…
前回の茶飲み話では、ダージリンのおいしい淹れかたについて、ちと長めにコメントしました。今日は引き続き、アッサムについて注意点を述べてみます。
現在市場に流通しているアッサムティの多くは、CTC製法で作られています。CTCの場合は、もともと力点が香りではなく甘味にありますので、抽出についてはさほど難しくありません。熱湯を使い、150ccにつき約2gの茶葉を使い、グレード(茶葉の大きさ)によって、2~3分の抽出を行えばおいしくはいるはずです。茶葉の計量についても、0.1g単位まで細かく計る必要はありませんし、抽出中の保温についてもさほど気にすることはありません。
一方、オーソドックス製法で作られたTGFOP1や、CTCでも旬の時期のものの場合は、香りも重要な要素となってきます。抽出時間はやはり2~3分でOK。但し、香りをより際立たせるため、ダージリン同様できるだけ抽出温度を高く保つことが望まれます。
アッサムティを長く抽出すると、骨太な苦味に近い味が出てきます。
これはミルクティにするのであれば、かえって飲み応えにつながり望ましい場合がありますが、ストレートの場合には、むしろ滑らかさを追求する為に、長くても5分程度で抽出を終えた方がよいようです。その他の産地の紅茶が、(新茶である限りは)長く抽出しても滑らかさを増すばかりなのに対し、最も甘いはずのアッサムに限っては、長く抽出すると滑らかさが損なわれるのは、不思議ですよね。
ただし、抽出時間を15分以上かけると、また滑らかさが戻り、骨太な風味はオブラートでくるんだように緩和されます。当然この場合にはコジーによる保温が必須です。
また近年では、香りに力点をおいたアッサムティの多くは、アッサム種ではなくクローナル種を使って作られています。こうした紅茶の場合には、例えTGFOP1のような、大きなグレードのものであっても、一度は2分の抽出で茶葉を抜いてみることをおすすめします。さらりと甘い飲み口の、香り豊かな紅茶が楽しめるはずですよ。
現在市場に流通しているアッサムティの多くは、CTC製法で作られています。CTCの場合は、もともと力点が香りではなく甘味にありますので、抽出についてはさほど難しくありません。熱湯を使い、150ccにつき約2gの茶葉を使い、グレード(茶葉の大きさ)によって、2~3分の抽出を行えばおいしくはいるはずです。茶葉の計量についても、0.1g単位まで細かく計る必要はありませんし、抽出中の保温についてもさほど気にすることはありません。
一方、オーソドックス製法で作られたTGFOP1や、CTCでも旬の時期のものの場合は、香りも重要な要素となってきます。抽出時間はやはり2~3分でOK。但し、香りをより際立たせるため、ダージリン同様できるだけ抽出温度を高く保つことが望まれます。
アッサムティを長く抽出すると、骨太な苦味に近い味が出てきます。
これはミルクティにするのであれば、かえって飲み応えにつながり望ましい場合がありますが、ストレートの場合には、むしろ滑らかさを追求する為に、長くても5分程度で抽出を終えた方がよいようです。その他の産地の紅茶が、(新茶である限りは)長く抽出しても滑らかさを増すばかりなのに対し、最も甘いはずのアッサムに限っては、長く抽出すると滑らかさが損なわれるのは、不思議ですよね。
ただし、抽出時間を15分以上かけると、また滑らかさが戻り、骨太な風味はオブラートでくるんだように緩和されます。当然この場合にはコジーによる保温が必須です。
また近年では、香りに力点をおいたアッサムティの多くは、アッサム種ではなくクローナル種を使って作られています。こうした紅茶の場合には、例えTGFOP1のような、大きなグレードのものであっても、一度は2分の抽出で茶葉を抜いてみることをおすすめします。さらりと甘い飲み口の、香り豊かな紅茶が楽しめるはずですよ。
お茶を知る > 淹れ方・楽しみ方 | - | -2004.01.17 Saturday
昨日の茶飲み話では、紅茶の淹れか…
昨日の茶飲み話では、紅茶の淹れかたは、茶葉の種類によって注意点が異なると書きました。今日からは、それを踏まえ、茶葉別においしく紅茶を淹れるために注意することを簡単に触れてみたいと思います。
まずはダージリン。紅茶の女王と呼ばれるこの紅茶は、淹れるにあたってもそれなりに配慮をしなくてはいけません。
まず、最も重要なのが、茶葉の量とお湯の量の比率です。
カップ一杯に対して、ティースプーンに一杯の茶葉を使うというのが、紅茶のゴールデンルールですが(ポットのための一杯は忘れてください)、ダージリンの個性をすべて引き出そうとすると、この指針は大雑把すぎます。
水質と茶葉の個性によって多少の増減はあるものの、原則として中国種であれば、1.1グラムの茶葉に対し、70-75ccの熱湯。クローナル種であれば、1.0グラムの茶葉に対し、70-75ccが適量です。
ダージリンの繊細なところは、この比率から上下10%の誤差を超えると、だいぶ風味が変わってしまうところ。薄ければ風味が平板になる上にお湯の味がしてしまい、濃すぎると逆に渋みだけが前面に出る上に、香りもこもってしまいます。ですから、ことクオリティシーズンのダージリンのよさを存分に引き出してあげるためには、必然的に0.1g単位まで計れる秤が必要になります。(これは1万円ぐらいで買えます。クオリティシーズンのダージリンの価格を思えば、高すぎるというほどではありません。)ポットの容量も同様にあらかじめ計っておく必要があります。
そして抽出時間は、概ね6分から7分。短すぎてはいけません。5分以下では、甘味もまろやかみも出てこないため、概ね渋くなりすぎてしまいます。逆に10分以上蒸らすと、まろやかみは増しますが、香りが少し控えめになるのと、まろやか過ぎて風味に奥行きがなくなってしまうことがあります。
長い抽出時間の間、茶液が冷めないように、コジーをきちんとポットにかぶせることも、ダージリンティでは欠かせないひと手間です。そして最後に、注ぐ直前に湯通しして温めたカップに、均一に注ぎ分けること。この、温度を高く保つオペレーションをいとわないことで、かぐわしいダージリンの香りを、最大限に引き出すことができるのです。
さて、これで、保温と計量こそが、ダージリンをおいしく淹れる決め手であることがおわかりいただけたでしょうか。しかし、保温はともあれ、0.1gの細やかさで茶葉を計るのは、どの家庭でもすぐにできるというわけではないかもしれません。この場合の便法としては、少し濃いめに紅茶を淹れることをおすすめします。そして、最後にカップにはいったお茶を味見しながら、さし湯を施して調整してあげるのです。
こうすることによって、濃すぎて渋すぎる紅茶、香りのこもってしまった紅茶を、まろやかな、香りあふれる紅茶に整えることができます。厳密に言えば、濃いめに蒸らしたダージリンは、あらかじめ適切に淹れたお茶よりもPhが低くなります。これは、よりまろやかになると捉えることもできますし、味が平板になると捉えることも出来ます。ただ、確実にいえるのは、ポリフェノールは通常よりもよく抽出されていますので、より健康によいということです。
まずはダージリン。紅茶の女王と呼ばれるこの紅茶は、淹れるにあたってもそれなりに配慮をしなくてはいけません。
まず、最も重要なのが、茶葉の量とお湯の量の比率です。
カップ一杯に対して、ティースプーンに一杯の茶葉を使うというのが、紅茶のゴールデンルールですが(ポットのための一杯は忘れてください)、ダージリンの個性をすべて引き出そうとすると、この指針は大雑把すぎます。
水質と茶葉の個性によって多少の増減はあるものの、原則として中国種であれば、1.1グラムの茶葉に対し、70-75ccの熱湯。クローナル種であれば、1.0グラムの茶葉に対し、70-75ccが適量です。
ダージリンの繊細なところは、この比率から上下10%の誤差を超えると、だいぶ風味が変わってしまうところ。薄ければ風味が平板になる上にお湯の味がしてしまい、濃すぎると逆に渋みだけが前面に出る上に、香りもこもってしまいます。ですから、ことクオリティシーズンのダージリンのよさを存分に引き出してあげるためには、必然的に0.1g単位まで計れる秤が必要になります。(これは1万円ぐらいで買えます。クオリティシーズンのダージリンの価格を思えば、高すぎるというほどではありません。)ポットの容量も同様にあらかじめ計っておく必要があります。
そして抽出時間は、概ね6分から7分。短すぎてはいけません。5分以下では、甘味もまろやかみも出てこないため、概ね渋くなりすぎてしまいます。逆に10分以上蒸らすと、まろやかみは増しますが、香りが少し控えめになるのと、まろやか過ぎて風味に奥行きがなくなってしまうことがあります。
長い抽出時間の間、茶液が冷めないように、コジーをきちんとポットにかぶせることも、ダージリンティでは欠かせないひと手間です。そして最後に、注ぐ直前に湯通しして温めたカップに、均一に注ぎ分けること。この、温度を高く保つオペレーションをいとわないことで、かぐわしいダージリンの香りを、最大限に引き出すことができるのです。
さて、これで、保温と計量こそが、ダージリンをおいしく淹れる決め手であることがおわかりいただけたでしょうか。しかし、保温はともあれ、0.1gの細やかさで茶葉を計るのは、どの家庭でもすぐにできるというわけではないかもしれません。この場合の便法としては、少し濃いめに紅茶を淹れることをおすすめします。そして、最後にカップにはいったお茶を味見しながら、さし湯を施して調整してあげるのです。
こうすることによって、濃すぎて渋すぎる紅茶、香りのこもってしまった紅茶を、まろやかな、香りあふれる紅茶に整えることができます。厳密に言えば、濃いめに蒸らしたダージリンは、あらかじめ適切に淹れたお茶よりもPhが低くなります。これは、よりまろやかになると捉えることもできますし、味が平板になると捉えることも出来ます。ただ、確実にいえるのは、ポリフェノールは通常よりもよく抽出されていますので、より健康によいということです。
お茶を知る > 淹れ方・楽しみ方 | - | -2004.01.15 Thursday