先日からダージリン、アッサムのお…

先日からダージリン、アッサムのおいしい入れ方についてコメントしてきましたが、今日は第三弾。中国紅茶についてです。

中国紅茶の主な産地は、キームン、雲南、武夷山(元祖のラプサンスーチョンです)、四川など。それに産地は雲南や広東など複数ありますが、ライチ紅茶も忘れてはいけません。

これらの紅茶は大別して工夫紅茶と、分級紅茶に分かれます。大雑把にいえば工夫紅茶が大きな茶葉、分級紅茶が細かい茶葉と思っていただければ結構です。

このうち、より抽出に気を使っていただきたいのが工夫紅茶。特にキームンでいえば特級、ほかの産地でもそれに相当するクオリティ以上のものです。

これらの紅茶に共通する特徴は、耐杯が利くこと。つまり、2煎目、3煎目まで楽しめるのです。これは、紅茶の常識から言えば意外かも知れませんが、中国茶として見ると当たり前のこと。1煎で飲みきることなど、中国の作り手はハナから考えていないのです。

この場合、一般的な紅茶の淹れ方とは、当然抽出時間や茶葉の量も変わってきます。通常の淹れ方が熱湯150ccに対し、茶葉2gで3〜5分抽出だとすると、茶葉3gで2分抽出(2〜3煎可能)ないし、茶葉5gで、1分抽出(3〜4煎可能)が工夫茶の淹れ方。中国国内では一般的に、最も香りと風味のよい1分抽出で供されます。使うのはテイスティングカップではなく蓋碗。洗茶をする場合もありますし、抽出のはじめに茶液の表面のアクを取り除く作業なども行います。

アク抜きはできればした方がよいですが、洗茶は好みの問題でしょう。
洗茶を行うと甘みは少し抜けますが、よりクリアな風味になります。

このような工夫茶の淹れ方で抽出するとお茶の風味はどうなるでしょう。まず、香りは濃密で、素晴らしく立ち上がります。そして甘みとまろやかみが最大限に抽出されます。

一方、苦味とか渋みは、あまり出ません。中国紅茶の場合、苦味成分や、渋み成分は、水に溶けにくく、長時間の抽出によってはじめて出てくるのです。そしてそれらは、中国的な味覚ではよしとされないため、滑らかな口当たりで甘みがあふれ、華やかな香りを最大限に引き出すべく、上記のような抽出方法がとられるのです。

(ちなみに、中国紅茶の価格による品質の差は、通常の淹れ方では分かりにくいのですが、工夫茶で淹れるとはっきりとその差がわかります。逆にいれば、高級な中国茶ほど、工夫茶で淹れるべきだということになります。)

これらを家庭で実践する場合、蓋碗がなくても、茶漉しつきのポットがあれば十分です。急須で淹れてもまったく問題はありません。国産の急須の常滑焼きは、中国の宜興茶壷と土の性質が似ているのです。逆に急須で淹れることを前提に考えるのであれば、抽出温度が熱湯なほかは、煎茶の淹れ方と同じでよいと思っていただければけっこうです。

次に、工夫茶の淹れ方ではなく、一般的な淹れ方で飲む際の注意点にも少し触れておきましょう。中国紅茶はどれもミルクティにもよくあうのですが、ミルクなら工夫茶で淹れる必要はありません。

この場合、まずは保温をきちんと行うこと。
そして、計量がシビアにできない環境ではきもち濃い目の抽出を行い、濃すぎる場合は、あとからお湯で調整すること。
抽出は長い分にはいくらでも結構です。10分以上抽出すると、前述の説明では渋みが出そうですが、Phが下がりよりポリフェノールが抽出される結果、まろやかみが勝ちますので、あまり渋いとは感じないはずです。

ただしミルクティの場合、ある程度アクがあったほうがよいと考える方は多いでしょう。その場合、5分程度の抽出で香りを保ちつつ、あえて骨太な風味にするのがオススメです。

最後に中国紅茶の保存の方法について。中国紅茶は一般に品質の保持が非常によく、摘み取ってから1年経過してもほとんど風味に変化はありません。これは焙煎を強く行っているからです。ですから、保管については常温で充分。むしろ湿気の吸収に注意を払ってください。

お茶を知る > 淹れ方・楽しみ方 | - | -2004.01.20 Tuesday