先日このコーナーで、おいしさとい…

先日このコーナーで、おいしさというのはひとりひとりが個別に感じる主観的な概念なのに、テイスターは万人にとってのおいしさを追求する仕事だと述べました。では、テイスターはどうやって万人にとってのおいしさを見極めるのか。今回はこの問いについての私の考えを述べたいと思います。

命題
ある産地で収穫されたA・B・Cという三つの紅茶をテイスティングしたとする。そのとき、AがBよりよく、BがCよりよいとしたならば、必ずAはCよりもよい。

紅茶にはおのおのの個性があり、それぞれのよさがあるとはいっても、テイスターはこの三段論法を受け入れる必要があります。この論理を突き詰めていくと、比較可能な産地の紅茶であれば、必ず序列をつけることが可能になります。ときにはAとBとが同等ということはありますが、じゃんけんのように3すくみにはなりません。というわけで、ある産地の紅茶の中で優劣を論じることは「私」という主観を前提とすれば可能になります。

なお、この尺度は、ダージリンならダージリン、アッサムならアッサムという同じカテゴリーの中でのみ有効です。ダージリンとアッサムでは、良さを判断する価値基準そのものが違うので比較は成立しません。(長くなりそうなので、続きはまた次回にしますね。)

お茶を知る > お茶の豆知識 | - | -2004.02.18 Wednesday

先日このコーナーで、おいしさとい…

先日このコーナーで、おいしさというのはひとりひとりが個別に感じる主観的な概念なのに、テイスターは万人にとってのおいしさを追求する仕事だと述べました。では、なぜテイスターとは、どうやって万人にとってのおいしさを見極めるのか、についての私の考えを述べたいと思います。(今日の文章は複雑でしかも長いです。)

命題1
ある産地で収穫されたA・B・Cという三つの紅茶をテイスティングしたとする。
そのとき、AがBよりよく、BがCよりよいとしたならば、必ずAはCよりもよい。

紅茶にはおのおのの個性があり、それぞれのよさがあるとはいっても、テイスターはこの命題を受け入れる必要があります。この論理を突き詰めていくと、比較可能な産地の紅茶であれば、必ず序列をつけることが可能になります。(この尺度は、ダージリンならダージリン、アッサムならアッサムという産地の中でのみ有効です。ダージリンとアッサムでは、良さを判断する価値基準そのものが違うので比較は成立しません。)

というわけで、ある産地の紅茶の中で優劣を論じることは「私」という主観を前提とすれば可能になります。次に、その主観を客観に近づけるためにはどうしたらよいか?

ある紅茶が「よい」といったとき、そこには必ず理由があります。
・嫌な味、香りがない。
・よりまろやかだ(=雑味がない)。
・より甘みがある。
・より香りがある。
・味のバランスがとれている。
・色が美しい。
・淹れ方を多少変えても、よりおいしくはいりやすい。
・上記の「よい」状態をより長く保ち続ける。

こうした尺度を念頭に置いたとき、もう一歩踏み込んで考えると、そこには科学的な根拠があるはずです。つまり、「甘みを担うAという成分が多い」とか、「香りを担うBという成分が多い」とかです。逆に「Cという風味があるからにはより日持ちがするはずだ」などという推論も、同様の理由から成り立ちます。味覚は個人的なものですが、その味覚に由来する科学的な根拠は、客観的にそこに存在します。テイスターの味覚や嗅覚、視覚は、味や香りから、そうした紅茶の持つ属性を推察することによって、主観を客観と結びつけることができるのです。

ですから時には、今おいしいAよりも、将来にわたってよりおいしくなるBを選ぶ可能性は、実際に存在します。それは、Aという紅茶を今おいしく感じさせてくれる成分aは、2ヶ月しか保持しない成分である、などという場合におこります。冒頭の命題で、「おいしい」ということばを使わず、「よい」と書いたのはそういう理由からです。

実は「よい」の具体的な内容については、テイスター(もしくは会社)によって異なります。何をもって美しい色とするか、何をもって味のバランスがとれているかは、結局個人の主観で決まるからです。大手の会社の中には、「よい」の基準を市場調査に求めているところもあります。私は市場調査をしませんので、自分の好みを大切にしながら、万人にとってのよさを想像するにとどめています。(ついでに私の好みを言わせて貰うと、それぞれの産地のもつ個性をよく実現している紅茶が大好きです。)

このようにして設定した基準に従って、最も「よい」紅茶を選べば(ブレンドの場合はつくれば)、多くの人にとってより「おいしい」と感じてもらう確率が高まります。最終的においしいと感じてほしい主体は「私」ではなく、実際に紅茶を買って飲むみなさんなのですから、そこに私がよさを押し付けることはできません。しかしその上で、より多くの人においしいといってもらえる紅茶を選び取ることができるかどうかが、テイスターの腕の見せ所なのです。

お茶を知る > お茶の豆知識 | - | -2004.02.18 Wednesday

今年はじめてスリランカから紅茶の…

今年はじめてスリランカから紅茶のテイスティングサンプルが届きました。そうです。ディンブラとヌワラエリヤ。セイロンのウェストグロウンティの旬の時期がやってきたのです。

今年は、実は一月中に好天に恵まれたため、例年よりも早く2月第三週にピークが訪れるのではないかと期待されていました。残念ながら2月初めに南インドとセイロン島全体に雷雨が続いた為、いったんは香りは後退してしまったのですが、本番はまだこれからです。今回テイスティングしたのはその降雨の前に摘まれたもので、まだピークに達していないながら、春の香り(スリランカの高地は常春の地ではあるのですが)を十分に楽しめました。

実は私はディンブラが大好きで、毎年シーズナルのディンブラを楽しみにしているのですが、1998年以来、本当に満足できるクオリティにはお目にかかっておりません。しかし、内戦も終結し労使関係も改善され、人事は既に整っています。あとは天運を待つのみ。大いに期待したいところです。

産地の息吹 > スリランカ | - | -2004.02.17 Tuesday

今日は何と、台湾からお客様が見え…

今日は何と、台湾からお客様が見えられました。どうも台湾のお茶のガイドブックにジークレフが紹介されているらしく、わざわざ紅茶を買いに台北から吉祥寺まで来られたというのです。

そういわれてみれば、今までも中国語を話すの旅行者風のお客様がときおり来店されていたのですが、いやはや、なんともびっくりです。

しかしいつの間に取材されたんでしょう。そのガイドブック、ぜひ一度拝見したいものです。(見ても分からないかも知れませんが・・・)

トリビア | - | -2004.02.15 Sunday

おいしさというのは、人が感じては…

おいしさというのは、人が感じてはじめて意味をもつ概念です。
ですから、客観的においしいとか、物理的においしいということはありえず、「私にとって」おいしいとか、「彼には」おいしく感じれれたというように、おいしさは誰かの主観からは逃れられません。

仲間内のある店員が紅茶をとても上手に淹れるというので、どのように淹れているのかを訊いてみたところ、次のような答えがかえってきました。

「淹れ方はマニュアルどおりです。だから、原理的には他の人が淹れたのと同じ味なはずです。ただ、おいしい紅茶を淹れたいと思いながら淹れているので、それが飲む人に伝わってよりおいしく感じるのかも知れません。」

おいしさは主観からは逃れられないという立場からすれば、これは「おいしいと錯覚させたのだ」という解釈にはなりません。その店員のしぐさとか思いによって、確かに紅茶はよりおいしくはいったのだということになります。

一方で、テイスターという立場からすれば、せっかくのおいしくするしぐさや思いといった文脈はすべて排除して、自分の舌をもって論理的に紅茶のおいしさを判断することが必要になってきます。自分の味覚という主観を基準にしながらなお、客観性(=万人にとってのおいしさ)を追及する。なんだか矛盾していますよね。

お茶を知る > お茶の豆知識 | - | -2004.02.14 Saturday

紅茶葉専門店ジークレフでは、アル…

紅茶葉専門店ジークレフでは、アルバイトを募集しています。

時 給:800円〜 週3回(各8.5時間)
仕事内容:製造・販売
交通費:支給

いっしょに働くことで、お店にとっても自分自身にとっても有益である
ような出会いを求めています。応募は、

TEL:0422-21-4812(担当:川崎・平野)または、
e-mail:kawasaki@gclef.co.jp
まで

お店からのご案内 > 従業員募集について | - | -2004.02.11 Wednesday

紅茶にはさまざまな香り成分が含ま…

紅茶にはさまざまな香り成分が含まれています。代表的な成分だけでも、20種類程度のものがあり、それらの香りが一体となってひとつの香りを形成しているのです。

ところが面白いもので、香り成分にも比較的保持のよいものと、すぐに揮発してしまうものとがあります。ということは同じお茶でも時間が経つと、どんどん香り(と味)が変化してゆくのです。

昨年のダージリンセカンドフラッシュが非常に出来がよかったことは、既に何度もお伝えしていますが、こんな年はある程度月日が経過すると、マスカットの香りが変化して、白桃のような香りに変わっていきます。この白桃の香りは空気よりも重いため、カップからふんだんに香りたつという感じではなく、むしろカップの中、茶液の上に濃密に薫ります。紅茶を飲もうとカップに口を近づけてはじめて感じる香りなんです。

カップから放たれる(空気より軽い)清涼な香り、飲んだあとに鼻に抜ける余韻は、比較的感じ取りやすいと思いますが、それらとあわせ、このカップに溜まる香りについてもぜひ感じてみてください。

お茶を知る > お茶の豆知識 | - | -2004.02.09 Monday

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