ハイブリッドとクローナル

ダージリンを選ぶときに、ある程度助けになる概念に品種があります。

ご存知のとおり、紅茶、緑茶、烏龍茶(青茶)などは、すべて同じチャの樹からつくられる飲料ですが、チャの樹は、大きく分けて中国種(小葉種・カメリアシネンシス)とアッサム種(大葉種・カメリア・アッサミア)のふたつがあります。(これにカンボッド種=中葉種を加える説もあります。)
ダージリンの場合、中国種、アッサム種のほかに「クローナル」というものが多く見受けられます。クローナルは従来、「アッサム種と中国種の交配種」と説明されてきました。しかし正確にはクローナルは「クローニングされた茶樹」と説明されるべきでしょう。同じ遺伝子を持つ茶樹を畑一面に挿し木等により増やしたものであれば、交配種でなくてもクローナルです。交配種はハイブリッドであり、先のアッサム種と中国種の交配種のクローナルは、ハイブリッド・クローナルと呼ばれるのが厳密な呼称ではないかと思います。

ゴパルダーラ農園やグームティ農園など、中国種(ピュア・チャイナ)をクローニングして出来たいわば第二世代のクローナルが存在する今、チャイナ・クローナル、ハイブリッド・クローナルと分けて呼ぶのがよいように思いますが、産地でもそうした分類は行われておらず、そのクローンの由来を農園に確認してみないと、そのクローナルがチャイナクローンであるのか、ハイブリッドクローンであるのかは分からないのが現状です。(飲めば分かる人にはわかりますが。)

また同じハイブリッドクローンでも、品種によって、中国種の特性を強く持っているものもあれば、アッサム種の特性を強く持っているものもあります。とはいえ、ハイブリッドクローナルといえば、8割方はシトラス、ライチ、パッションフルーツなどのフルーティーな香気を湛えたものだと言って間違いないでしょう。

ですからフルーティーで滑らかな味わいのダージリンがお好きならクローナル、ある程度渋みがあって、フラワリー、あるいはマスカテルの香気があるものがお好きなら中国種(ピュア・チャイナ)を探すのがオススメです。

ジークレフでは、ダージリンは中国種を中心に買い付けています。今期のファーストフラッシュはどうなるか未定ですが、少なくとも1ラインは中国種になることでしょう。

2016.3.19追記:ここに記載しているハイブリッドクローン云々の記載ですが、その後ダージリンでは、ほとんどハイブリッドクローン(交配種)は実用化されておらず、ほとんどが中国種由来の選抜種のクローンであることがわかりました。このエントリの当時、日本ではハイブリッドとクローンという用語が非常にしばしば混同して用いられており、このエントリはそれに整理をつけようとして記述したものだったのですが、実際にはダージリンの現地では、日本で思われていたようなハイブリッドクローン(交配種)自体、ほぼなかったという状況でした。なおハイブリッドクローン(交配種)は、2016年現在ではインドでも実用化、商品化されていますが、ダージリンでは相変わらず見かけません。

お茶を知る > お茶の豆知識 | - | trackbacks (0)2007.03.18 Sunday

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