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紅茶の抽出、そして鑑定について今日はちょっと落ち着いて、紅茶の抽出や鑑定についてお話ししてみたいと思います。 インド産紅茶であるダージリン、アッサムを中国茶器や急須で、何煎も淹れていくということは、製茶、鑑定、抽出の3つの技術がぴったりとマッチした時に可能になります。実際、10煎とれるアッサムは数年前にも生産されていたにもかかわらず、その時は誰もそのことに気づきませんでした。これは、その時点ではその抽出技術が確立されておらず、したがって多煎抽出が可能であると見抜く鑑定技術も当然存在しません。ですから、数年前には多煎抽出のできるアッサムは、存在しなかったということになります。 しかし、ちょっと立ち止まってみれば、中国紅茶や台湾紅茶は、昔から多煎抽出は可能でした。そして近年生産される和紅茶にも、それが可能なものが存在します。であれば、インド産の紅茶にもそうしたことが可能なお茶があるのは当たり前の話です。 しかし実際には、インドやその他の南洋の紅茶の製法では、多煎抽出はそうそう簡単にいくものではありませんでした。これは、ここ十数年ほどの、主にダージリンやネパールで進んだ製茶工程の深化によって可能になったもので、それ以前はほとんど多煎できる紅茶はなかったと言えます。 私がダージリンやネパールを茶壷や蓋碗を使って淹れ始めたのは、もうだいぶ前のことですが、それは主に2008年に考案した「二重抽出」という技術を使ったものでした。これは一言でいえば、1煎目、2煎目を共に濃い目に抽出し、ブレンドすることで、従来の淹れ方よりも早く、そして香り高く紅茶を抽出し、しかもその味わいも濃厚になるというものでした。 しかし、本当に精度の高い紅茶であれば、特にブレンドをする必要はなく、1煎目、2煎目を抽出したら、各々そのまま楽しめるはずです。そのことは、二重抽出を考案した当時から抱えていた思いでしたので、私はずっとこの10年間、そうしたお茶を探していました。今回ご紹介したダージリン、アッサムのファーストフラッシュは、そういう意味で精度の高い製茶が施されていた、ということに他なりません。実際の処、大きな声でアナウンスはしなかったまでも、これまでに入荷したダージリンでもそれが可能と言ってもよいお茶は存在しました。ただ、明らかにそれが普通の淹れ方よりも価値があると言えるかわからなかったため、公にしなかったのです。 しかし、この精度の高い製茶が施されたものを手にし、あれこれと探求してみた時、私自身が想像していたよりもずっとお茶の世界が広がっていたことがわかりました。昨日(4/20)のメールマガジンでご紹介したような、90℃に湯温を下げて淹れる抽出方法、そして数年以上にわたる長期熟成などはその一例です。おそらく、まだ見つかっていない新たな楽しみ方が隠されており、さほど時間もかからずにそれを見出すことができるのではないかと思っています。 ところで、ダージリンやネパールについては先ほど説明した通り、近年の製茶技術の進歩といえますが、アッサムについてはどうでしょうか?実は、今回のマンガラム農園などが10煎にも及ぶ抽出ができるお茶に仕上がったのは、ほとんど偶然の産物と言ってもいいのかも知れないと思っています。今のところアッサムの生産者が、ダージリンのような形で既存の製茶技術に変化を加え、本格的な製茶において精度を高めているという話はおそらくありません。そうではなく、本当にたまたま条件が揃ったときに、今回のような紅茶が見つかるのです。ですから、数年に一度という言い方は、別に誇張ではありません。多煎抽出ができるとか、長期熟成ができるとかは知らなかったとはいえ、私はずっと、同じタイプの紅茶を探してきたのですから。 アッサムについては、多煎抽出はまだしも、長期熟成については、本当に様々な偶然が重なって、見出すことができた話です。社内外のサポートにも恵まれて、数年前に買い付けた同タイプのアッサムが、大変よい保存状態で保管されていたものを、適切なタイミングで見出すことができたため、その熟成した風味を体感することができたのです。数年を経たアッサムは、これが本当にアッサムなのかというほど、違う風味へと変貌しています。しかもその在り方は一通りではありません。 製造においてはまだ偶然とはいえ、テイスターとしての研鑽を積めば、どうやらそういった紅茶を見逃さずに買い付けることは不可能ではないようです。そうした見通しが立ったからこそ、この度、安定した多煎抽出のレシピを確立し、皆様に共有することができたのです。 新たな抽出方法は、新たな楽しみ方、新たな茶文化を生みます。ぜひこれからも、皆さんと一緒に新たな茶文化を創り出し、そして楽しみたいと思います。 2018.4.21 川崎 武志 お茶を知る > 淹れ方・楽しみ方 | - | trackbacks (0)2018.04.21 Saturday TRACKBACK URI
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