雲霞(ウンカ)

「雲霞のごとく」ということばが、雲や霞のように湧きあがる様を言う慣用句ですが、その飛び交う様はまさしく雲霞の如しということから、この小さな昆虫に雲霞(ウンカ)という名を与えられたのでしょうか。

ウンカ成虫1
稲にとっては害虫といわれるこのウンカですが、一部のお茶にとっては、決定的に重要な役割を果たします。体長わずか2mm程度。この緑色の小さくて繊細な昆虫が、茶葉のエキスを吸うことで、茶葉の成長が阻害され、非常に小さな芽をつけるようになります。

この芽が、ウンカ芽。ウンカの影響を受ければ受けるほど、そのお茶の香りは高まり、美しい甘味を湛えるようになります。ダージリン、東方美人、蜜香紅茶など、その香味から多くのファンをひきつけて止まないお茶は、みなウンカの力を借りているのです。

ウンカ 成虫2
東方美人の名手であるとある台湾の茶師は、ウンカの活動を活発にするため、茶樹の背を高めに育て、下草が生い茂るように畑をつくっています。ダージリンでも、近年有機栽培農園のお茶の品質が俄然上がってきた背景には、有機栽培農園が除草剤を一切使わないため、ウンカが繁殖しやすくなってきているということがあります。

自然と人間との共生が、大きなテーマになっている昨今において、ウンカというか弱く繊細な存在がお茶のおいしさを引き出しているという事実は、注目に値することのように思います。

(注:農薬の中には、選択的に害虫を防除することにより、ウンカは生かしておくことができるものもあるそうです。インドや台湾などでは使用していませんが、日本の茶畑でウンカの力を借りるときには、そうしたものも必要になってくるかもしれません。)

お茶を知る > お茶の豆知識 | - | trackbacks (0)2010.06.29 Tuesday

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