土の味

茶園風景

ダージリンの農園を久方ぶりに訪れて、やってみたかったことのひとつに土の味を調べるというのがありました。

有機栽培に移行していく農園が多い中で、土壌の育成にはさまざまな工夫がなされており、農園によってもその方法には違いがあります。その土、実際に口に入れて味を確かめてみて、お茶の味の違いと関連付けられたら面白いと考えたのです。これは、お茶でやっているバイヤーはあまりいないと思いますが、ワインではよく聞く話です。

で、実際にやってみてどうだったか。いくつかの農園の中で、最も「甘い」と感じたのは、サングマ農園とシーヨック農園でした。このふたつについては、甘味と同時に、スーっとする香り(プーアル茶のようなというか樟脳のようなというか、雨上がりに感じられる土の香りそのものです)もありました。

一方、苦いと感じたところはひとつもありませんでした。「農薬漬けになっている土は苦い」といいますが、なんとダージリンでは2002年ごろを境に農薬の使用量は劇的に減っており、除草剤を使っているところもほとんどない状況なのです。

茶園風景2

例えば、とあるコンベンショナル(有機ではない)の農園で、"Spray Report"と"Manure Report"を一年半分めくらせてもらったのですが、確かに化学肥料の使用量は極めてわずかでした。その農園では、2002年には1ヘクタールあたり5kgの化学肥料(それとて、日本の農業の平均的な使用量の1/3であり、多いとはいえません。)を使用していたのですが、昨年は1ヘクタールあたり350gしか使用していませんでした。つまり、この5年間で1/15まで使用量を減らしていたのです。

この量はヘクタールあたりで見ると、日本の農業における平均的な使用量の約2%の量でしかありません。しかも、それはダージリンにおいては当たり前のことであり、特にアナウンスするようなことではないというのです。

土の味の話に戻すと、この農園の土も確かに甘いと感じましたが、サングマ、シーヨックの両農園ははっきりと味が違いました。そしてそのサングマ、シーヨックのセカンドフラッシュは、ジークレフで入荷したものに関しては、確かにアミノ酸のうまみをとても豊かに感じることができます。そのうまみは、舌の上を茶液が通過するにつれ、唾液腺が刺激されるのが体感できるほどです。

こうしてみていくと、ダージリンの味わいの豊かさは、その裏に確かな裏づけがあると言うことができるでしょう。食の安全性についての意識が高まる昨今、このような真摯な姿勢でつくられた最高のお茶を提供できる幸運を、身にしみて感じています。

産地の息吹 > ダージリン | - | trackbacks (0)2008.08.25 Monday

TRACKBACK URI
http://blog.gclef.co.jp/chanomi/sb.cgi/608
TRACKBACK