昨日は、テイスターが自分の主観の…

昨日は、テイスターが自分の主観の中で紅茶の優劣を比較するときには、論理学でいう三段論法が適用できることを示しました。

次に、テイスターの主観的判断、「私はこの紅茶を最もよいと思う。」を客観、すなわち「この紅茶は最もよい紅茶だ」に近づけるためにはどうしたらよいかについて考えてみましょう。

ある紅茶が「よい」といったとき、そこには必ず理由があります。
・より甘みがある。
・より香りがある。
・色が美しい。
・より日持ちがする。
等々。

こうした尺度を念頭に置いたとき、もう一歩踏み込んで考えると、そこには科学的な根拠があるはずです。つまり、「甘みを担うAという成分が多い」とか、「香りを担うBという成分が多い」とかです。逆に「Cという風味があるからにはより日持ちがするはずだ」などという推論も、同様の理由から成り立ちます。味覚は個人的なものですが、その味覚を感じさせる成分自体は、客観的にそこに存在します。テイスターの味覚や嗅覚、視覚は、味や香りから、そうした紅茶の持つ属性を推察することによって、主観を客観と結びつけることができるのです。

ですから時には、今おいしいAよりも、将来にわたってよりおいしくなるBを選ぶ可能性は、実際に存在します。それは例えば、Aという紅茶を今おいしく感じさせてくれる成分aは、2ヶ月しか保持しない成分である、などという場合におこります。冒頭の命題で、「おいしい」ということばを使わず、「よい」と書いたのはそういう理由からです。

このように、テイスターは自らの感覚をセンサーとして利用します。センサーの性能は個々人によって違いますが、よいセンサーを持つだけではまだ、優れたテイスターとはいえません。それは何故か。そのことについてはまた明日考えましょう。

お茶を知る > お茶の豆知識 | - | -2004.02.19 Thursday