昨日にひきつづき、新しいタイプの…

昨日にひきつづき、新しいタイプのダージリンティの話。
今年入荷はしなかったけど、目を引いた紅茶のひとつに、プッタボン農園のクローナルがありました。グレードは特別につけられたわけでなく、ジークレフのファーストフラッシュと同じ、FTGFOP1 Clonal Supreme。

このクローナル、通常のセカンドフラッシュに比べ、かなり発酵を強くしてあるのが特徴。ほとんどアッサムに近いほどでした。とはいえ、ティップがシルバーからゴールデンに変化するまでではなく、赤ワインのようなきれいな緋色の紅茶でした。(ゴールデンティップになるまで発酵させると、ジークレフが毎年入荷するアッサムセカンドフラッシュとほぼ同じ風味になることがわかっています。)

なぜこの紅茶が目を引いたかというと、それはかなり発酵が強いにも関わらずマスカットフレーバーもとても豊かに感じられたからです。この時期の紅茶は、まず香りに照準を合わせ極限まで香り高い紅茶を目ざしてつくるというのが多いのですが、この紅茶は逆に、まずは甘味の強いダージリンをつくり、もてる余力をすべて香りにつぎ込んだといった感じで、そのコンセプトが珍しかったのでした。

その結果、非常にできのよいセカンドフラッシュの香りと、ダージリンには珍しいくらい強い甘味が、ひとつの紅茶の中に結実し、独特のバランスを実現していました。イメージとしては、タルボ農園や、フグリ、シンブリ農園のティピークローナルを、更にパワーアップさせた感じです。

こうした紅茶が秋冬にかけて、どのように変化をしていくのか、私はとても興味がありました。この紅茶は、たまたま来日していた、インドのテイスターといっしょにテイスティングして意見を求めたのですが、彼もこのような紅茶はあまり見かけないとのこと。ただ、彼の鑑定では、この紅茶に最高級の価格をつけることはできないとのことでした。(この辺は、見識あるテイスターでも意見が分かれる部分なのです。)

実際にはこの紅茶は、われわれの手元にサンプルが届いたときには、既に非常な高値で落札されたあとで、今のところ国内に入荷したという話は聞きませんが、もし農園サイドが、今年の試みを成功と判断するのなら、来年また、同じような紅茶が生産されることでしょう。

産地の息吹 > ダージリン | - | -2003.07.24 Thursday